先日米フロリダ州のウォルトン郡刑務所にて、チェイス・クーヴィル(26)受刑者が脱獄未遂事件を起こしたと話題になりました。
話題となったのは脱獄手段で毛布と歯磨きのチューブで鉄格子を3年掛けて鉄格子を切断するというもの。
鉄格子がほぼ切断された時点で刑務官に発見されたそうです。異変に気がつくきっかけは鉄格子を切断する際に「キリキリ」と擦る音がうるさく他の受刑者が刑務官伝えたことがきっかけとのこと。
3年掛けて準備して計画実行直前で気が付かれるという不運もあり話題となりました。
チェイス・クーヴィル受刑者は脱獄未遂となりましたが、今回は脱獄を成功させた受刑者と手段を取り上げてみます。
18世紀ロンドンの脱獄王
◆ジャック・シェパード(1702年3月4日~1724年11月16日)
⇨イギリス:空き巣、窃盗犯
▼1回目の脱獄
手枷を切断し、壁に穴を開け、シーツや毛布をロープ代わりに脱獄。
▼2回目の脱獄
訪問者との間仕切りの窓を切り脱獄。
▼3回目の脱獄
釘で鎖の鍵をこじ開け、煙突を塞いでいた鉄の棒を切り出し、ドアと壁を破壊して、毛布を使って近くの家の屋根に飛び移り脱獄。
1回目と3回目の脱獄手段はルパン三世をはじめアニメや映画などでもお馴染みの手段ですね。
FBIから「社会の敵ナンバーワン」に指名された男
◆ジョン・ハーバート・ディリンジャー・ジュニア(1903年6月22日~1934年7月22日)
⇨アメリカ:銀行強盗
▼脱獄手段
木片を靴墨で黒く染めた模造銃で看守を脅し、厳重警戒の刑務所から脱獄
ジョン・ハーバート・ディリンジャー・ジュニアは自らの脱獄より、紳士的な立居振舞いと鮮やかな銀行強盗の手口で当時の禁酒法や世界恐慌で閉塞的な状況にあった大衆やマスコミの支持を集めた事に加え悲劇的な死を迎えた事によりジョン・ハーバート・ディリンジャー・ジュニアをモデルとした映画が多数制作されています。
▼ジョン・ハーバート・ディリンジャー・ジュニアをモデルにした映画作品
・1945年3月公開「Dillinger」(邦題「犯罪王ディリンジャー」、日本公開1952年7月)
ローレンス・ティアニー主演
・1965年4月公開「Young Dillinger」(邦題「ギャング王デリンジャー」、日本公開1965年7月)
ニック・アダムス主演
・1973年7月公開「デリンジャー」(日本公開1974年10月)
ウォーレン・オーツ主演
・2009年7月公開「パブリック・エネミーズ」
ジョニー・デップ主演
脱獄不可能とされたアルカトラズ連邦刑務所から脱獄
◆フランク・リー・モリス(1926年9月1日~)※1962年6月11日消息不明
⇨アメリカ:麻薬所持、強盗
アルカトラズ連邦刑務所はアルカトラズ島にあり海に囲まれた刑務所となっている。
▼脱獄手段
脱獄発覚までの時間稼ぎ用の自分たちに似せたダミー人形と細長い浮袋とシートを準備。独房から外に繋がる穴を2年間掛けて掘ることに成功。
脱出決行日はダミー人形をベッドに配置し、細長い浮袋とシートを持ち掘った穴から独房の外へ脱出。準備していた細長い浮袋とシートを使い「いかだ」を組み立て海を渡り脱出?
脱出決行日の翌朝に看守が脱獄に気がついて操作を開始したが、いかだの一部や防水バッグは発見されたがフランク・リー・モリスの遺体が発見さず消息不明となる。
FBIはフランク・リー・モリスが強盗などの常習犯であったにもかかわらず、消息不明になってから一度も捕まっていないことからサンフラン湾で溺死したと断定している。
▼フランク・リー・モリスの脱獄を描いた映画作品
・1979年公開「アルカトラズからの脱出」
クリント・イーストウッド主演
IQ169の天才脱獄王
◆スティーヴン・ラッセル(1957年9月14日~)
⇨アメリカ:詐欺
▼1回目の脱獄(1992年5月13日)
・刑務官などの動きを観察し秘密捜査官の存在に気がつく。
・自分でアザを作りリンチされたと偽り警備が緩いフロアへ移される。
・囚人の私服保管場所から茶色のTシャツと赤いズボンを盗み出す。
・刑務所内でトランシーバーを盗み出す。
・脱出決行日準備した私服に着替えトランシーバーで話す事で刑務所に潜入している秘密捜査官に装い刑務官に門を開けてもらい脱獄
▼2回目の脱獄(1996年7月13日)
・脱獄の影響で保釈金が100万$となり保釈金建て替え会社を利用することができない状況。
・保釈金5万$に偽造した書類を準備。
・裁判所で保釈金額を偽造した手紙を落し物として刑務官に手渡す。
・スティーヴン・ラッセルは判事になりすまし書記官へ届いた2通の手紙のうち偽造した手紙が正しい書類と伝え正式な手紙を処分させる事で保釈金が5万$で承認される。
・スティーヴン・ラッセルは保釈金建て替え会社に関係が深い弁護士と偽り保釈金を振り込ませる事で実際に保釈金を払わずに保釈され脱獄。
▼3回目の脱獄(1996年12月13日)
・刑務所の様子を観察し囚人服と医療セクションに出入りしている医師の服が似ている事に気がつく。
・囚人仲間の協力を得て緑色のペンを大量に集める。
・着替え用の囚人服を入手し緑色のペンのインクで囚人服を染める。
・緑色に染めた囚人服に着替えて医療セクションから脱獄。
▼4回目の脱獄(1998年3月初旬)
・3度の脱獄によりマスコミにも注目を集めていたこともあり刑務所内の自由行動が禁止され、頻繁に独房や持ち物を検査される状況となる。
・刑務所内で許されている図書館の読書で難病の囚人に対して恩赦が与えられる事を知る。
・医療セクションで働く囚人にカルテを改ざんする事でエイズ患者と偽る。
・医師に処方された薬をため込む。
・食事の量を減らし病状が悪化しているよう装う。
・ため込んだ薬を大量に摂取して昏睡状態となり治療の施しようがない末期のエイズと医師に診断される。
・末期のエイズ患者と診断され恩赦を受け療養所で余生を過ごすため出所。結果として脱獄成功。
▼奇術師に例えられた4度の天才的な脱獄手段も話題ですが、スティーヴン・ラッセルの生い立ちからの人生も注目を集めています。
・生後間もなくに養子に出され、養父母の元で育てられた。
・結婚し娘が産まれる。
・実母を探すため警察官になる。
・実母を探しだし会いに行くが実母に3人の子供が居ることを知り警察を辞める。
・交通事故で重症となる。
・自分を偽ることをやめて自分らしくゲイとして生きることを決意する。
・1995年刑務所内で服役していたフィリップ・モリスと出会う。
・仮釈放の身だったフィリップ・モリスの元へ脱獄したスティーヴン・ラッセルが現れかくまう。
・フィリップ・モリスはスティーヴン・ラッセルをかくまったため禁固20年の刑を受けることとなる。
・4回目の脱獄を成功させたスティーヴン・ラッセルは療養所に行かずに死亡証明書を偽造する。
・スティーヴン・ラッセルは弁護士になりすましフィリップ・モリスを助けようとする。
・1998年4月4度目の脱獄から1ヶ月でスティーヴン・ラッセル逮捕。
・現在スティーヴン・ラッセルは総刑期167年でテキサス刑務所に服役中で、23時間の監視状態に置かれている。スティーヴン・ラッセルはフィリップ・モリスへ気持ちを伝える手段を今も考えている事でしょう。
▼服役中のスティーヴン・ラッセルは生存しているにもかかわらず人類史上類を見ない脱獄王で数奇な人生が注目され実話を元にした映画が制作されています。
・2009年1月公開「I Love You Phillip Morris」(邦題「フィリップ、きみを愛してる!」、日本公開2010年3月)
ローレンス・ティアニー主演
昭和の脱獄王
◆白鳥 由栄(しらとり よしえ、1907年7月31日~1979年2月24日)
⇨日本:強盗殺人
▼1回目の脱獄
針金で合鍵を作り脱獄
▼2回目の脱獄
ブリキ板を釘で加工した手製のノコギリで鉄格子を切断し脱獄。
▼3回目の脱獄
手錠と視察孔に味噌汁を吹きかけ続け錆びてもろくなったところで手錠を引きちぎり視察孔を外して脱獄。
※手錠の鎖を引きちぎった事があり、20kgある特製品の手錠を後ろ手に掛けられていた。
▼4回目の脱獄
視線を上に向けてごまかしながら金属片で床下を切断。食器でトンネルを掘り脱獄。
・4回目の脱獄後1948年に収監。模範囚として過ごし1961年に仮釈放された。
▼白鳥 由栄は「1日に120km走った」「手錠の鎖を引きちぎる」「40歳を過ぎて米俵を両手に持って水平に保つことが出来た」「全身の関節を簡単に外す能力を持ち頭が入る隙間があれば全身を通すことが出来た」など超人的な体力と腕力を持っていたとされており多数のドラマや漫画などにモデルとして登場しています。
〆 ぐだぐだぶろぐ by タリム